一見優しげなその言葉に、裏がないはずもない。

「でも、心配いらなかったかしら。
仲良いオトモダチもできたようだし……ねえ?」

ルーシーはそう言って、意味ありげな視線を向ける。
カノンと目が合うと、猫のようにその目を細めた。

(……一体、何が目的……?)

何かよからぬことでも考えているのではないだろうか。
そうでないと、わざわざルーシーがこんなところに来るはずがない。

「そうですか。それなら用はもう済みましたよね」

「ルーシー様に対して、何なのその態度!?」
「ただの侍女が何様のつもり?」

言外に「早く帰れ」と言い放つニアに対して、非難の声を上げるアリサとユウミ。
それをルーシーが制した。

「まあいいわ、ここに長居している理由もないしね。行くわよ」

そう言って、さっさと踵を返すルーシー。
その後をアリサとユウミが慌てて追いかけた。

「……何あれ」

その後ろ姿を見つめながら、ニアが不審げに呟く。

(何も、起こらないといいけど……)

カノンは、自分の嫌な予感が当たらないことを祈った。