これがルーシーの言う“最大限の誠意“
ひたすらにカノンを辱めて服従させるための行為。
ルーシーは日頃から何かと理由をつけては、カノンにこの行為を要求した。

冷たい床に額を擦り付けるカノンを見下ろして、ルーシーは満足げに笑う。

「そう、それでいいの。恥晒しのあなたは、そうやって地べたを這いつくばっているのがお似合いよ」

そしてゆっくりとカノンに近づくと、その傍らにしゃがみ込む。

「ああでも……あなたは一生、そのままでいいのよ」

不自然に優しげな声で語りかけた次の瞬間、がっと手のひらでカノンの黒い前髪を掴み上げた。

「……っ」

「だってあなたの呪われた歌声なんて、この世の誰にも必要とされないんだから!」

呪われた歌声。その一言は、カノンの脳裏に悪夢のような()()()()を甦らせるには十分だった。

そう、だから私はもう……歌うことができないの。

ルーシーは振り払うようにカノンの前髪から手を離すと、取り巻きを引き連れて礼拝堂を去って行った。
床に倒れ伏したまま、カノンはその後ろ姿を光のない瞳で見つめていた。

どうして、ルーシーはこんなにも私を憎むのだろう。

全てを手に入れたのはあなたで―――全てを失ったのは私であるはずなのに。