竜王の歌姫

それから数日後、ルーシーのお披露目パーティーが開かれることになった。

よりパフォーマンスとしての演出が強くなるように、パーティー会場にはしばらく浄化を受けず、
若干の瘴気を身体に溜め込んだ状態になっている竜騎士団が数人待機している。

ルーシーは大勢の招待客の前で歌い、その竜騎士団たちの瘴気を浄化してみせたのだった。
次代の歌姫が現れた安堵と喜びに会場は沸き上がった。
ルーシーの周りにはあっという間に人が集まり、口々にルーシーを褒め称える。
その中に、ルーシーが次代歌姫であることを疑う者は誰1人としていなかった。

ギルバートはそのタイミングを見計らい、外の空気を吸いにパーティー会場を抜け出した。
喧騒から離れて息を吐き、1人ゆっくりと中庭を歩く。

(あれは……?)

その先に、座り込むような人影が見えた。

竜人はいくらか夜目がきく。背格好からすると侍女だろうか。
今日のパーティーは、侍女であっても参加が可能なはずだ。
それが何故、こんなところに?

訝しく思いながらその侍女らしき女へ近づいた。
ギルバートの足音に気づいたのだろう、侍女らしき女が振り返る。

ほのかな灯りに照らされたその姿を目にした瞬間、心臓が大きくざわめいた。