それから休憩の際には、度々ギルバートが裏庭を訪ねてくるようになった。
2人はいつも隣合って座り、一緒の時間を過ごす。
ギルバートからの問いに、カノンが身振りで答える。
相変わらずそんなやり取りが続いていた、ある時。
「君、文字の読み書きはできるのか?」
ギルバートからのその問いに、カノンは頷く。
神殿には、かつて王宮から寄贈されたという書庫が設けられていた。
カノンは雑用を押し付けられる日々の中で、時間を捻出しては書庫に通っていた。
そこで文字の読み書きやこの国の歴史など、様々なことを独学で学んだのだった。
「そうか、それなら……」
ギルバートが地面に手を当て、その手を持ち上げていく。
途端に“土“の力が発動して、連動するように地面から土が吸い上げられていく。
集まった土は固まって、大きな長方形の土版のようなものが出来上がった。
更にギルバートは、近くに落ちていた木の枝を拾い上げると、それを一度撫で上げた。
次に手を離すと、ただの棒切れだった木の枝の先がペン先のように鋭く尖って、全体は滑らかに整えられていた。
これもきっと、5属性の力なのだろう。
扱うのが難しいといわれる力を、あまりに鮮やかに使いこなす様子に、カノンは圧倒されるばかり。
「これで、自由に文字を書くことができるな」
カノンに差し出される土版と木の枝のペン。
想像よりも軽いそれを受け取って、カノンはそっと文字を書いてみる。
それを見たギルバートが、口角を上げた。
『ありがとうございます』
「ああ、どういたしまして」
それが、2人の初めての会話だった。
2人はいつも隣合って座り、一緒の時間を過ごす。
ギルバートからの問いに、カノンが身振りで答える。
相変わらずそんなやり取りが続いていた、ある時。
「君、文字の読み書きはできるのか?」
ギルバートからのその問いに、カノンは頷く。
神殿には、かつて王宮から寄贈されたという書庫が設けられていた。
カノンは雑用を押し付けられる日々の中で、時間を捻出しては書庫に通っていた。
そこで文字の読み書きやこの国の歴史など、様々なことを独学で学んだのだった。
「そうか、それなら……」
ギルバートが地面に手を当て、その手を持ち上げていく。
途端に“土“の力が発動して、連動するように地面から土が吸い上げられていく。
集まった土は固まって、大きな長方形の土版のようなものが出来上がった。
更にギルバートは、近くに落ちていた木の枝を拾い上げると、それを一度撫で上げた。
次に手を離すと、ただの棒切れだった木の枝の先がペン先のように鋭く尖って、全体は滑らかに整えられていた。
これもきっと、5属性の力なのだろう。
扱うのが難しいといわれる力を、あまりに鮮やかに使いこなす様子に、カノンは圧倒されるばかり。
「これで、自由に文字を書くことができるな」
カノンに差し出される土版と木の枝のペン。
想像よりも軽いそれを受け取って、カノンはそっと文字を書いてみる。
それを見たギルバートが、口角を上げた。
『ありがとうございます』
「ああ、どういたしまして」
それが、2人の初めての会話だった。

