「ふう……これで全部ですかね。どうぞ」
柔和な笑みを浮かべながら、イルマが集めた薪を差し出してくる。
それを受け取って、カノンはぺこりと頭を下げる。
そしてイルマが何か言うよりも早く、そそくさとその場から離れた。
背中にイルマからの視線を感じながら、カノンは足を止めることなく思う。
(やっぱりあの人……少し、怖い)
この神殿内で唯一、カノンにも分け隔てなく接してくれる存在であるはずのイルマ。
黒髪黒目の凡庸な容姿で、いつも穏やかに微笑んでいて、周りからの評判も良い。
けれどカノンは、その笑みにどこか胡散臭いものを感じていた。
はっきりとした理由はわからない。そこはかとない違和感と恐怖。
カノンは、イルマに対して苦手意識を持っていた。
そういえば……イルマが神官として神殿に現れたのは、確か“竜王の歌姫“の適性検査の少し前のことだった。
頭に浮かんだ回想は、しかしすぐに忙しさに追われ消えていった。
柔和な笑みを浮かべながら、イルマが集めた薪を差し出してくる。
それを受け取って、カノンはぺこりと頭を下げる。
そしてイルマが何か言うよりも早く、そそくさとその場から離れた。
背中にイルマからの視線を感じながら、カノンは足を止めることなく思う。
(やっぱりあの人……少し、怖い)
この神殿内で唯一、カノンにも分け隔てなく接してくれる存在であるはずのイルマ。
黒髪黒目の凡庸な容姿で、いつも穏やかに微笑んでいて、周りからの評判も良い。
けれどカノンは、その笑みにどこか胡散臭いものを感じていた。
はっきりとした理由はわからない。そこはかとない違和感と恐怖。
カノンは、イルマに対して苦手意識を持っていた。
そういえば……イルマが神官として神殿に現れたのは、確か“竜王の歌姫“の適性検査の少し前のことだった。
頭に浮かんだ回想は、しかしすぐに忙しさに追われ消えていった。

