「あんたの次の仕事はこれよ」

神官服を着た2人の女は無作法にそう言って、洗濯場の中を指差した。

そこには大型のシーツ・何十人分の衣服といった大量の洗濯物が積み上がっている。
とても1人でやり切る量ではない。

カノンは洗濯場に向けていた視線を、目の前の彼女たちに移す。
そもそも、カノンはつい先ほど神殿内の掃除を終えたばかりで、今日の洗濯当番は目の前の彼女たちであるはずだった。

「……何? 何か文句でもあるの?」

カノンの視線を受けた彼女たちの顔が、不機嫌そうに歪んだ。
しかしその顔は、すぐにニヤァと意地悪い笑みに変わっていく。

「文句があるなら、言ってみなさいよ。言えるものならね!」

それでも黙り込んだままでいるカノンを、彼女たちは嘲笑う。

「ほら、いいからさっさとやりなさいよ。
あんたなんか、これくらいしか役に立たないんだから」

彼女たちが去った後で、カノンはぎゅっと服の裾を握る。
カノンの着ている神官服は、先ほどの彼女たちのものよりも随分と見窄らしく薄汚れていた。

こんなのは、日常茶飯事だ。今更傷ついたりなんかしない。

この国で、この場所で、私は無価値の人間なのだから。