竜王の歌姫

その言葉に、カノンの心臓がドクンと嫌な音を立てる。

「……え……?
それ、どういうこと……?」

呆然と聞き返すカノンに向けて、ルーシーが告げた。

「なんだ、知らなかったの?
あんたたちを襲ったヤツらの目的は、カノン―――あんただったんだって」

男たちの目的は、カノンだった。

正確には、カノンの歌声だ。

神殿入りはおろか、“竜王の歌姫“だって夢じゃない娘だと、そんな噂話を聞きつけた男たちはカノンを拐い、身寄りのない孤児として神殿に売りつけることを目論んだ。

そうなれば、本来親族たちが貰うはずの大金が自分たちの元に入ってくる。

「―――だからそのために、あんたの両親は殺されたんだって。
やだ、もしかして知らなかったの? 
街ではその話で持ちきりだったわよ!」

知らなかった。そんなこと、誰も教えてくれなかったから。

「う、そ……」

嘘だと思いたかった。

「嘘じゃないわよ。だってそうじゃないなら、普通もっと金のありそうな家を狙うはずじゃない」

けれどルーシーの言葉を否定することができない。

きっと、あまりにも酷な話だと、大人たちはあえてその事実をカノンに伏せていたのだろう。

「ていうことはさ、あんたの両親が殺されたのって―――あんたのせいだよね」

「……私の……」

呆然とするカノンの顔を覗き込むようにして、どこか楽しげな様子のルーシーが言う。

「そう!あんたのその歌!その歌声のせいよ!」

心臓が壊れそうなほどに早鐘を打って、全身から血の気が引いていく。

わたしの、うた。