その夜、ギルバートは人知れずカノンの部屋を訪れた。
「今夜は星がよく見える。今度は夜の散歩でもしないか?」
カノンは、差し出された手にそっと手を重ねる。
「……はい。喜んで」
その答えを聞いたギルバートが、ひょいっとカノンの体を抱き抱える。
「え……っ」
「しっかり掴まっていてくれ」
ギルバートの言葉に頷くと共に、抱えられた体がふわりと浮き上がる。
ギルバートの背中からは、立派な黒龍の翼が生えていて。
空に向かって急上昇していく感覚に慣れず、思わず目をつぶる。
「カノン」
ギルバートの声に、そっと目を開ける。
「……綺麗……」
目前には、煌めく星空が広がっていた。
「気に入ったか?」
「はい。
こんなに星を間近で見たのは初めてで……」
ギルバートは「それなら良かった」とふっと笑う。
そうしてギルバートは、カノンをその腕に抱いたままゆっくりと王都を飛んで回った。
空から見下ろすこの国は、きらきらと煌めいていた。
見つめながら、胸に浮かんだ感情が声に溢れる。
「この美しい景色を……ずっと守っていきたい。
改めてそう思いました」
「ああ……俺たちの手で、守っていこう」
2人の視線が重なって、見つめ合う。
「改めて、君に伝えたいことがある」
「……はい」
もう、2人を隔てる障壁は何もない。
「カノン。―――君のことが好きだ」
何よりも聞きたかったこの言葉。
そして、何よりも言いたかったこの言葉。
「私も……ギルバート様のことが好きです」
決して叶うことのないと思っていた想い。
届くことはないと思ったこの相手が、目の前にいる。
奇跡のような光景に、涙が滲む。
ギルバートの片手が、カノンの頬を撫でる。
そしてギルバートの顔が近づいてきて、そっと唇が重なった。
ああ。こんなにも、誰かを愛おしく思ったのは初めてだ。
愛しい人が担うこの国を共に守ることができる。
こんなに嬉しいことはない。
「愛しているよ。―――俺の歌姫」
どんなに辛くても、悲しくても。
竜の存在が、私を照らす光となった。
焦がれた末に、巡り会えた唯一の存在。
これからも―――愛しいあなたとこの国のために、私は歌い続ける。
〈Fin〉
「今夜は星がよく見える。今度は夜の散歩でもしないか?」
カノンは、差し出された手にそっと手を重ねる。
「……はい。喜んで」
その答えを聞いたギルバートが、ひょいっとカノンの体を抱き抱える。
「え……っ」
「しっかり掴まっていてくれ」
ギルバートの言葉に頷くと共に、抱えられた体がふわりと浮き上がる。
ギルバートの背中からは、立派な黒龍の翼が生えていて。
空に向かって急上昇していく感覚に慣れず、思わず目をつぶる。
「カノン」
ギルバートの声に、そっと目を開ける。
「……綺麗……」
目前には、煌めく星空が広がっていた。
「気に入ったか?」
「はい。
こんなに星を間近で見たのは初めてで……」
ギルバートは「それなら良かった」とふっと笑う。
そうしてギルバートは、カノンをその腕に抱いたままゆっくりと王都を飛んで回った。
空から見下ろすこの国は、きらきらと煌めいていた。
見つめながら、胸に浮かんだ感情が声に溢れる。
「この美しい景色を……ずっと守っていきたい。
改めてそう思いました」
「ああ……俺たちの手で、守っていこう」
2人の視線が重なって、見つめ合う。
「改めて、君に伝えたいことがある」
「……はい」
もう、2人を隔てる障壁は何もない。
「カノン。―――君のことが好きだ」
何よりも聞きたかったこの言葉。
そして、何よりも言いたかったこの言葉。
「私も……ギルバート様のことが好きです」
決して叶うことのないと思っていた想い。
届くことはないと思ったこの相手が、目の前にいる。
奇跡のような光景に、涙が滲む。
ギルバートの片手が、カノンの頬を撫でる。
そしてギルバートの顔が近づいてきて、そっと唇が重なった。
ああ。こんなにも、誰かを愛おしく思ったのは初めてだ。
愛しい人が担うこの国を共に守ることができる。
こんなに嬉しいことはない。
「愛しているよ。―――俺の歌姫」
どんなに辛くても、悲しくても。
竜の存在が、私を照らす光となった。
焦がれた末に、巡り会えた唯一の存在。
これからも―――愛しいあなたとこの国のために、私は歌い続ける。
〈Fin〉

