竜王の歌姫

カノンを見つめながら、ギルバートが優しい声で言った。

「君は、そんな声をしていたんだな」

「……あ……」

そこでカノンは、声が出るようになっていることに気づく。

(そうだ、私はあの日……)

両親の幻影と会い、自分の中の呪いを解き放って―――この国を守るために歌った。

「この国の危機を救ったのは、間違いなく君だ。
君の歌が、瘴気を消し去ったんだ」

「わたしの……」

「まずは改めて礼を言わせてくれ。
この国を守ってくれて、ありがとう」

ギルバートが、カノンに向かって深々と頭を下げる。

「い、いえそんな、顔を上げて下さい……!」

顔を上げたギルバートが、真剣な眼差しでカノンを見つめる。
その瞳の中には、震えるような歓喜と有り余る程の慈しみが込められていた。


「カノン、君は俺が探し求めていた人そのものだった。
―――君こそが、本当の歌姫だったんだ」