竜王の歌姫

次に目を覚ました時には、全てが終わっていた。
とある療養所のベッドの上で、カノンはことの顛末を聞かされた。

カノンたち家族を襲った男たちは、他国から流れてきたならず者の一味であったということ。

金に困っていた男たちは、カノンの家に押し入って、抵抗した両親を惨殺した。
そしてカノンのことは売り飛ばして金にしようとした。
けれど異変に気づいた街の人たちの通報もあって、竜人が指揮を務める警備部隊が出動し、男たちを捕えた。
そうしてカノンは救出され、保護を受けることができた。

幸せは、こんな簡単に壊れてしまうものなのだと、初めて知った。

お父さんもお母さんも、もういない。もう会えない。
殺された。あの人たちに殺されたんだ。

目の前で繰り広げられた光景が何度も何度もフラッシュバックして、カノンは嘔吐する。

私、ひとりぼっちになったんだ。

胃が空っぽになっても吐いて、吐いて、そして声が枯れ果てるまで泣き叫び続けた。