今日はラースが帰国する日。
城門前には、ギルバートにミドル、お付きの騎士たちが見送りに集まっていた。

「カノン、元気でね……!」

「体には気をつけてね。
これから寒くなるからあったかくして過ごすのよ」

鳥人侍女の2人が、別れを惜しむようにカノンを抱きしめる。

ラースのお付きと言う立場を通して、すっかり打ち解けたこの2人とお別れするのはやはり寂しくて。
カノンも2人をぎゅっと抱きしめ返して別れを惜しんだ。

「……ああ。またな、ラース」

ギルバートとの挨拶を終えたラースと目が合う。

「じゃあね、カノン」

柔らかく微笑むラースに、頭を下げた。

そんなカノンの頭に、ポンッとラースの手が置かれたことで顔を上げる。

「カノンのおかげで楽しかったよ」

そう言って、ポンポンと優しくカノンの頭を撫でるラース。
カノンも同じ気持ちだったから、笑顔を返す。

「ギルバートに嫌気が差したら、いつでも俺のとこ来ていいからね」

「おいラース」

冗談めかしたラースの発言に、突っ込みを入れるギルバートの声が続く。

(こんなやり取りを見れるのも、今日で最後なんだな)


フォーゲルに帰るみんなが、いつまでも元気でありますように。

物寂しさと共に祈りを込めて、カノンはラースたちのことを見送った。