「カノンならきっと、神殿にだって入れるんじゃないか?」
「しんでん?」
とある街の人の言葉に、カノンは首を傾げる。
「ああ、神殿っていうのは限られた人間の娘しか入れないところなんだ。
こんな辺鄙な街よりも、もっといい暮らしができるんだってよ。
そこで“竜王の歌姫“になんて選ばれた日には、なんと竜王のお妃様になるんだ!
この国で2番目に偉い人になるんだから、きっとどんな贅沢だって叶うんだろう」
竜人は、人間の美しい歌声を好むとされる。特に若い娘の祈りを込めた歌声は、竜人たちにとっての力になると言われている。
そのためこの国に住む、12歳から成人を迎えるまでの人間の娘のことを“乙女“と呼び、乙女たちは毎晩竜人へ向けて、祈りの歌を捧げることが義務となっていた。
そして乙女の中でも、限られたものだけが神殿に入ることができる。
神殿に入ったものには“聖なる乙女“の称号が与えられ、人間の中での特別な存在として敬われることになる。
そして何より特別な存在―――竜王の歌姫。
これは、竜王が代替わりする時に、たった1人だけ現れる乙女のこと。
この世界には、瘴気というものが存在する。
空気中に黒く漂うそれは、普通の人間にとっては何の害もない。
しかし竜人には、この瘴気は毒となるのだという。
一度に大量の瘴気に侵されたり、身体に蓄積された瘴気が許容量をオーバーすると
竜人は自我を失って“狂化“する。
けれど竜人は、その瘴気を取り払う術がない。
「しんでん?」
とある街の人の言葉に、カノンは首を傾げる。
「ああ、神殿っていうのは限られた人間の娘しか入れないところなんだ。
こんな辺鄙な街よりも、もっといい暮らしができるんだってよ。
そこで“竜王の歌姫“になんて選ばれた日には、なんと竜王のお妃様になるんだ!
この国で2番目に偉い人になるんだから、きっとどんな贅沢だって叶うんだろう」
竜人は、人間の美しい歌声を好むとされる。特に若い娘の祈りを込めた歌声は、竜人たちにとっての力になると言われている。
そのためこの国に住む、12歳から成人を迎えるまでの人間の娘のことを“乙女“と呼び、乙女たちは毎晩竜人へ向けて、祈りの歌を捧げることが義務となっていた。
そして乙女の中でも、限られたものだけが神殿に入ることができる。
神殿に入ったものには“聖なる乙女“の称号が与えられ、人間の中での特別な存在として敬われることになる。
そして何より特別な存在―――竜王の歌姫。
これは、竜王が代替わりする時に、たった1人だけ現れる乙女のこと。
この世界には、瘴気というものが存在する。
空気中に黒く漂うそれは、普通の人間にとっては何の害もない。
しかし竜人には、この瘴気は毒となるのだという。
一度に大量の瘴気に侵されたり、身体に蓄積された瘴気が許容量をオーバーすると
竜人は自我を失って“狂化“する。
けれど竜人は、その瘴気を取り払う術がない。

