八島は、かつて賑わっていた市場の跡を歩く。瓦礫の間には、仲間たちの笑顔が幻のように浮かぶ。彼はそれを振り払い、唇を引き結んだ。
「思い出は無意味だ」と呟く。声は低く、掠れている。かつての白銀の剣は錆びついた短剣に変わり、優雅な姿は乱雑な服と伸び放題の髪に取って代わられた。それでも、彼の目は鋭さを失っていない。
突然、微かな気配。八島は身を低くし、短剣を握る。瓦礫の陰から現れたのは、異形の生物だった。ダズの眷属だ。骨と皮だけの四足の怪物、目には赤い光が宿り、口から黒い霧を吐き出す。ダズの力の欠片が宿った化け物だ。
「お前の主はどこだ」と八島は唸る。怪物が飛びかかるが、彼の動きは速い。短剣が一閃し、怪物の首が落ちる。だが、八島の表情は変わらない。こんな下っ端を倒しても、ダズやキラには届かない。彼は歩みを進める。目指すは島の最北端、黒い塔。そこに、ダズとキラが潜む。