そして、家に案内した。慣れた手つきで玄関の鍵を解錠し、玄関を開ける。
「ここでいいよ」
と、玄関に置くよう促したけれど……あろうことか器用に靴を脱ぎだした。
は?
「キッチン借りるぞ~」
「え、キッチン?」
さも当然のように中に入ってきて、廊下を兼ねたキッチンを発見し。迷うことなく廊下に段ボールを置き、ビニール袋をキッチンに。そして段ボールを開いていた。
何やってんの? というより前に、家に入ってきた事に焦りを感じていた。
けれど、段ボールから取り出したものを私に見せてきて……あぁ、なるほどと悟った。これも何とかしろと。
「これもよろしく」
「じゃないわ!!」
取り出したのは、お酒の瓶。しかも、日本酒3本。一升瓶ではないけれど……これを消費しろと。そう言いたいのか。
「これを一人で飲めと!?」
「だから来たんだろ。一緒に飲めば半分で済む」
「……」
二人で宅飲みする、と。
いや、さすがにおかしすぎる。
しかも3本持ってきたって事は、飲めなかった残りは置いてくって事よね。さすがにこれ3本を2人でなんて、いける?
「俺酒あんま強くないからさぁ、さすがにこれを消費するのは無理ゲーだろ? だから頼むって」
「いや、他に頼めよ」
「貰ってくんなかったから困ってるんだよ。こんな上等なやつを毎回タダでもらってるから、さすがに悪いって」
「……」
「母ちゃんに何回言っても聞かなくてさぁ~。酒屋の叔父さんから貰うから何とかしろって毎回毎回押し付けてくんの」
「美和子さぁん……」
一体どれくらいの頻度で送ってくるのか聞きたいところではあるけれど……聞かないほうがいい気がする。
家には消費しきれなくて余ってる日本酒もあるらしい。どんだけもらうのよ。まず説得しろ、その叔父さんを。



