朝陽は今日、休日だったらしい。私が仕事が終わって帰宅した頃に持っていってやると言われた。別に自分で取りに行くよ、と言ったんだけど重いから車で持ってくと頑なだった。
でもさ、私が持てないほどの量を持ってくる、って事だよね、それ。一体どれだけ持ってくるつもりなのよ。
それより……朝陽って車持ってるんだ。というより、運転出来るんだ。私としては意外だ。
私は電車通勤だから、最寄り駅で下りて歩きでアパートへ。すると、見慣れない車が一台駐車場に見えた。きっとあれが朝陽の車だろう。
嫌に緊張してしまう。けれど、平常心でいけば大丈夫。相手はただの幼馴染だ。幼稚園からの付き合いで、それもあっていつも一緒にいただけの相手。だから、大丈夫。
もう辺りが暗くなってきている時間だから、近づくにつれて運転席が光っていることが分かる。あれは……ゲームやってんな。スマホを横にしてるから、MMORPGあたりか。朝陽そういうの好きだったもんね。私のゲーム好きも朝陽の影響だし。
さて、もう車の持ち主は確定したから声をかければいいんだけど……ちょうどいいところで声をかければ怒るか。だがしかし、そこを気にせず声をかけるのが私である。
コンコン、と運転席の窓をノックする。一瞬視線がこっちに向いたけれど、すぐに画面に戻した。あぁ、今大事なところっすね。待ってろ、とでも言いたいんだろうけれど……おい、頼んできたのはそっちだろ。
けれど、いつも通りの朝陽に安心してしまった。そうだよね、朝陽ってこういう奴だよね。何緊張してたんだろう。
「よし、勝った」
という声が聞こえてきて、運転席が開かれた。ようやくゲームが終わったらしい。
「なぁにが勝ったよ。恩人に対して良い態度だな」
「ごめんって。ちょうどボス戦だったんだよ」
「あっそ」
そんな会話をしつつ、後部座席を開けて箱を抱えていた。……みかん箱じゃん。まさか中身はみかんだけじゃないよね。
いや、一応写真を見てどれが欲しいか言っておいたから、さすがにそれはないか。
けれど、気になった。そのみかん箱の上に乗ったビニール袋は何だ。中身が気になったけれど、あえて聞かなかった。変なものが入っていたらタダじゃおかないが。



