大丈夫かな、と思っていたら急に立ち上がった朝陽に腕を掴まれた。
「俺んちで飲み直そ」
「……マジ?」
「ずるい」
「……私、もうお酒入ってるんですけど。酔い潰すつもり?」
「さぁ?」
「おい」
スマホでタクシーを呼びながらとんでもない事を言い出したけれど、内心嫌ではなかった。このまま家に帰るのは、寂しいから。
まぁ、明日仕事なんだけど……朝陽を叩き起こして車で家に送ってもらおう。
「どうせ家にあるお酒減らしたいだけじゃなくて?」
「まだ真香と一緒にいたい、ってのが本音」
「……」
やばいな……これは絶対酔いつぶれるぞ。何てこと言ってくるんだこの男は。
はぁ、しょうがないな。
「ゲームはなしね」
「しないしない。初恋が叶ったこの時間をもうちょい噛み締めたいんだから、ゲームに使ったらもったいないじゃん」
初恋、なんだ……
信じらんないけど……朝陽のその笑顔が、それが本当の事なんだと証明しているように見えた。
「信じらんないなら、母ちゃんに聞いてみ?」
「……いや、結構です」
聞けるわけがない。
だって、私も朝陽が初恋で……美和子さんに何となく勘づかれてたんだから。はは……美和子さん鋭すぎだな。
東京に行く事を聞かされた後の、あの高校時代。そして再開してから今日まで。苦しかったけれど……報われた気がした。
しかも……〝初恋〟だなんて嬉しい言葉をもらえるとは微塵も思わなかった。
「あ、来た。早く行こ」
「はいはい」
これが幸せ、って言うのだろうか。
いや、こんなもんじゃないと思ってもいいのかな。だって、せっかく朝陽と、幼馴染じゃなくて、恋人になれたんだから。今までは幼馴染としての時間。これから始まるのは、恋人としての時間だ。
「……ありがとう、朝陽」
「なに、突然」
「んーん、何でもない。早く行こ」
この幸せな時間が、ずっと続く事を願って。
END.



