「ほら、せっかく来たんだし見てこーぜ!」
「えっあっ!」
いきなり手を繋がれ、引っ張られる。
綺麗なイルミネーション。けれど、朝陽に握られた手から伝わる熱に、意識がいってしまう。
気付かれたくない。けれど、どうしたらいいのか分からない。
この恋心を隠すことがどれだけ大変で、辛かったかは鮮明に覚えている。昔の話だ、と自分に言い聞かせても、消えてくれない。
それを思うと、何かがこみあげてくる。そこに、朝陽がいるのに。
「真香、あれ見えるか?」
「っえ……」
あれ、と言いつつ身体をくっつけてくる。顔を私の顔に近づけ、指を差しているけれど、どれを言っているのか分からなかった。
「あのツリーのてっぺん」
「あ……うん……」
近すぎて、心臓が馬鹿になるんじゃないかってくらい、速い。
けれど、離れたくても体が動かない。
「……お前さぁ」
その言葉に、ドキッとして肩が上がる。気付かれてしまっただろうか。
けれど朝陽は、私の両頬を掴んできた。
「寒いんだろ」
「えっ……」
「寒いなら言えよ。痩せ我慢なんかして風邪引いたらシャレんならねぇぞ」
思いもしなかった説教に、びっくりしてしまった。
マフラーくらいしろよ、と自分が巻いていたマフラーを私に巻く。ほら帰るぞ、とまた手を繋いで引き返した。
「お前は昔から変わらないな。痩せ我慢しすぎ。そのくせやめろって言ってるだろ」
「……うん」
そう怒られるけれど……朝陽の匂いが気になって、生返事しか出来ない。
朝陽の匂いで、いっぱいで。握る手にも、熱が伝わってくる。
「……写真くらい撮らせろ」
「あーはいはい、さっさと撮れよ」
「そこどけ」
こんな事を言ったのは、きっと、もう少し朝陽と一緒にイルミネーションを見たかったからだと、思う。けれど、そんな事を素直に言えるわけがない。
私は、朝陽の目にはどう映っているだろうか。
……高校生の、ままだろうか。



