私達の間には、会話は一切ない。ラーメンを啜る音のみ。
よく、美味しいものを誰かと楽しく食べた方がより美味しくなると言っている人がいるけれど、私はラーメンを食べている時だけは、そうは思わない。
ラーメンだけに集中したい。静かに、味わいたい。ただそれだけだ。他に気が散ってしまえばどんどん冷めてしまうし麺が伸びてしまう。
だから、私がラーメンを食べている時誰かに邪魔をされたくない事を、朝陽はよく知っているから静かになる。
「はぁ……ご馳走様でした……」
「ご馳走様でしたっ!」
食べ終わったタイミングは、二人とも同じだった。
そして、どちらも丼の中はすっからかん。スープまで美味しかったから全部飲んでしまった。
カロリーを気にすることは全くない。美味しいものを提供してもらえたのだから完食するのは当たり前のことだ。カロリーとかは後で考えればいい。
「マジで感謝。朝陽ありがと」
「もっと褒め称えてくれていいんだぜ?」
「神様あざっす」
はぁ、至福の時だった……マジで美味しかった。
また来よう、絶対。
「また連れてきてやるよ」
「……」
「な?」
「うんっ」
周りを気にせずラーメンを食べられるのは、一人で来るか朝陽と来るかくらいだ。なら、また一緒に来てもいっか。
連れてきてくれたのは朝陽だしね。
「俺の奢り」
最後の会計は何故か朝陽が私の分も払ってくれた。別によかったのに。
「じゃあ次は私払うから」
「また、な」
……また、次朝陽とラーメンが食べられるのを、楽しみにして。
美味しいラーメン、ご馳走様でした。



