「朝メシ、食ってっていい?」
「時間は?」
「ある。大丈夫」
本当かよ。知らないからな、私は。とりあえず、そのどや顔はムカつくからやめろ。
私は今日出勤だけど、全然余裕だ。ゆっくりとした朝ご飯の時間を十分に確保出来ている。
「あのさ、昨日、私寝た?」
「寝た。お前昨日飲むスピード速かったぞ」
マジか。そんなつもりは全くなかったんだけど……その原因は、何となく、いや、はっきりと予測出来た。
朝陽にあんな事を言われたからだ。
『髪が長くなったからか? 最後は高校生の時だったしな。……――綺麗になった』
あんな事を言われたら、正気でいられるわけがない。
しかも、あんな優しい顔で言われたら……期待してしまう。
「帰らなかったんだ」
「お前寝たら帰れないだろ」
「叩き起こせ」
「まぁそれもあったんだけどさぁ……酒入ってたし、代行呼ぶのも面倒だなって」
「アホか」
だったら自分の車で来るなよ。自分だろ、酒持ってきたの。タクシーで来い。
はぁ、私の料理の面倒くささにあんなに呆れてたくせにさぁ。自分が代行呼ぶのを面倒くさがってどうすんのよ。
「目玉焼きでいいか? パンあったよな」
「……私作ろうか?」
「いや、俺作る。半熟がいい」
「……そうですか」
いや、さすがに相手はお客様だしな。とは思ったけれど……やりたいならやらせよう。私は……昨日お風呂入ってないからシャワー浴びないといけないんだけど、お風呂、キッチンの向かい側なんだよなぁ。
……いや、気にしたら負けだ。
「後ろ向くなよ。いいな」
「はいはい。ごゆっくり~」
はぁ……何やってるんだろ、私。



