〇恋桃・ナレーション
※言葉に合わせてその都度描写する

こんにちは!佐々木恋桃です!
筒井斗愛先輩に恋して以来暇さえあればアタックしまくった結果、ついに
斗愛『そっか。・・・じゃあ待っててくれる?』
恋桃『待つ、とは?』
斗愛『俺が答えを出すまで』
と言われちゃいました!!
これって脈アリですよね!?!?

ねぇ、斗愛先輩。
確かに恋桃は待つと言いました。言いましたよ?
ですが先輩、あれから3か月経ちました。世間はすっかりクリスマスムードです。※冬服姿の恋桃
果たして恋桃はいつまで待てばいいのでしょうか。
もちろん嫌だってわけじゃありませんよ!?
ただ、いつ言われるのかそわそわして睡眠時間が減っているんです!!
前までは8時間睡眠が当たり前でしたのに今では6時間睡眠になっています。
その責任とってくださるんですよね!?ねぇ!!?

それとなく訊いてはいるんですけど、はぐらかされるというかなんというか――怖がってる?(恋桃に尋ねられたときの斗愛→曖昧に笑って目を伏せる、まつ毛に影が映っていて綺麗だが憂いを帯びている)

理由まではわかりませんが、そんな気がします。いつか話してくれるでしょうか。
話してくれますよね?
とにかく恋桃は待つのみです!!←グッと意気込む

それはさておき恋桃の環境に変化が訪れました。
なんと席替えをしたのです!
まぁ今までに何回かありましたけど今回は特別です。悪い意味で!!!!
今までは周りに友達が一人や二人いましたが、今回は誰とも近くになれませんでした。
それどころかみんなと真逆のところに配置されました・・・。
悪いことがあればその分良いことがある、人生はプラマイゼロといいますもんね。
恋桃にとっていいこと――先輩と両想いになる日も近いということですね!!
ですよね、先輩!?!?

奥田「ね、佐々木さん」
恋桃「はい。何でしょうか」
奥田「さっきの授業のここの部分メモし忘れたから見せてもらってもいい?」←ノートのページをさしながら
恋桃「いいですよ。どうぞ」
奥田「ありがとう!」

今話しかけてきたのは前の席の奥田愛翔(おくだまなと)君。一緒に応援合戦に出た人の一人で、最近やたらと声をかけて来る人です。
友達からは恋桃に気があるんじゃないかと言われていますが、恋桃が斗愛先輩のことが大好きなのは周知の事実なのでそれはないと思います。
いくらなんでも無謀すぎます。
だって先輩と比べたらすべての人がジャガイモ同然になってしまうので・・・!!


〇放課後

恋桃(つ、つらいです・・・)←半泣き

この日の恋桃はとことんついていませんでした。
電車は大幅に遅延して学校には遅刻するし、お弁当を家に忘れて購買で買うことになるし、一つ課題をし忘れていて休み時間を全部使ってすることになるし・・・!!
しかもそれが放課後までかかってしまい、先輩と一緒に帰ることが出来ませんでした。
多分もう帰っちゃってますよね・・・。
いつもだったら恋桃が下駄箱で待ち伏せして一緒に帰るのに・・・!!!
今まで一度もこんなことなかったのに・・・!!!!!!
思いがけず「押してダメなら引いてみろ」の状態になってしまいました。
恋桃としては「押して押して押しまくれぇ!!!」で行きたかったんですけどこればかりは仕方ないです。
先輩はどう思ったのでしょうか。
もしかして「桃ちゃんの気持ちはここまでなのか」って幻滅されたかもしれません。
一応「今日は課題をしなければならないので一緒には帰れません(泣)」とメッセージを送っておいたのですか、読んでくれたのか分かりませんし・・・。
ああああついてなかったから先輩に会って癒されたかったですぅぅぅぅうう!!!
↑ぐすぐす涙目で手を動かしながら説明

今にも泣きそうになっていると、教室のドアが開ける。もしかして先輩が恋桃を迎えに来たのでは・・・!?と期待したがそんなわけはなく入ってきたのは奥田だった。

奥田「あれ、佐々木さん?まだ残ってたの?」
恋桃「はい。課題をやっているんです」
奥田「へー、佐々木さんが忘れるなんて珍しいなぁ」
恋桃「そうですね」

恋桃(同意はしましたが何故奥田君は恋桃が課題を忘れたことがないと知っているのでしょう。あれ、何かの教科の係でしたっけ。そして何故前の席に座って恋桃のノートを見てくるのでしょう。集中できないんですけど・・・)

恋桃「そういう奥田君は何で教室の戻ってきたんですか?」
奥田「ん、俺?委員会が終わって帰ろうとしたら佐々木さんのローファーがあるのが分かったから一緒に帰ろうかなーって」←頬杖をついてじっと恋桃を見ながら
恋桃「え」←固まる

恋桃(下駄箱を確認してわざわざ戻ってきたんですか・・・。もしかして奥田君は一人で行動できないタイプですか。下校ぐらいさっさとすればいいのに)

奥田「今日はいつもの先輩と一緒じゃないんでしょ?」
恋桃「何で知ってるんですか」
奥田「その先輩が男友達と一緒にいるの見たから」
恋桃「そうですか・・・」←少し考え込むように

恋桃(きっと田崎先輩と子安先輩のことですね。あの二人と一緒なら安心です。これを機に他の女性に目を向けられなくてよかったです。
いつ第二の恋桃が現れるかわかりませんもんね)


〇靴箱・夕方

結局奥田君は何だかんだ言いながら恋桃と一緒に靴箱までやってきました。
↑恋桃、説明

恋桃「もしかして一緒に帰ろうって本気で言ってたんですか」
奥田「本気だよ。俺そんな嘘つくタイプに見える?」←恋桃の顔を覗き込む
恋桃「よく知らないのでわかりません」←ふいっと逸らす
奥田「じゃあこれから知ってってよ」
恋桃「はぁ・・・」←あまり興味なさそうに

恋桃(なかなかしつこいですね。でもここはびしっと言わないと)

恋桃「あの、ご存じだとは思いますが、恋桃は斗愛先輩のことが好きなんです。ですから一緒には帰れません」
奥田「なんで?先輩はもう帰ったんでしょ」
恋桃「そうですが・・・」←俯く

恋桃(恋桃が奥田君と帰ったら先輩はどう思うでしょうか。嫉妬するでしょうか。気にしないでしょうか。それとも「もういいよ」って見放されるでしょうか・・・)

拳をぎゅっと握りしめる。

恋桃(少しでも先輩が嫌な気持ちをする可能性があることを恋桃はしたくありません。先輩に後ろめたいことなんかしたくない、でもそれを話しても通じるでしょうか。どれも恋桃の杞憂かもしれないのに)

恋桃が言いよどんでいると、足音がこちらに近づいてくる。

斗愛「桃ちゃん」

恋桃がパッと顔を上げると斗愛がいた。恋桃の顔が明るくなる。

恋桃「えっ斗愛先輩!?待っててくれたんですか!?」
斗愛「そう返信したんだけど気づかなかった?」←いつものようににっこりと笑う

ここで斗愛にメッセージを送ってからスマホを見ていなかったことに気づき急いで確認すると、斗愛から「どれくらいかかる?待ってるよ」と連絡が入っていた。

恋桃「あ、本当でした・・・!」

斗愛が恋桃を待ってくれていたのだと分かると心がじわじわと温かくなってきた。
それとは対照的に斗愛は冷ややかな視線を奥田に向けた。

斗愛「もしかして課題があるっていうのは嘘で、そこの彼と一緒に帰りたかったの?」

なんてことないことを確認するように斗愛は言うがその目は悲しそう。

恋桃「違いますよ!奥田君は恋桃についてきただけで」
斗愛「そうなの?じゃあ桃ちゃんは誰と帰りたかったの?」←試すように
恋桃「そんなの斗愛先輩に決まってるじゃないですか!」
斗愛「だよね」

恋桃(なぜわかりきったことを改めて聞くのでしょう。それも奥田君に見せつけるように。こんな先輩は見たことがありません)←はてなマークを浮かべながら

斗愛は口で弧を描くと恋桃の手をそっと握る。

恋桃(え、え?て、手!?!?!)←頬をぶわっと染めながら

恋桃(うう〜いきなり繋がれたので手汗がついているかもしれません。どうしましょう。気持ち悪いってすぐに手を離されでもしたら、しばらく立ち直れません・・・!!)と恋桃が悶えていると斗愛が恋桃と奥田の間に立つ

斗愛「ということだからえーっと・・・奥田君?桃ちゃんは俺と帰るからじゃあね。ほら、帰ろう桃ちゃん」
恋桃「はい!奥田君、また明日です!」

斗愛は恋桃と手を掴んだまま歩き出す。
奥田は苦虫を嚙み潰したような顔で見る。

デートのときとは違い、歩くスピードが速い。まるで何かを振り切ろうとしているよう。表情もずっと硬いまま。
そんな斗愛を見て恋桃心配する。

恋桃「先輩・・・?」
斗愛「あっごめん歩くの速かったよね。ほんと、ごめん・・・」←落ち込んでて泣きそうな顔

恋桃、今すぐ抱きしめて安心させたくなる。それぐらい斗愛は追い詰められているように見えた。

恋桃(なんで、そんな悲しそうな顔してるんですか・・・)

その不安を取り除きたいのに、原因が分からなくて心が痛む。澄んでいたはずの斗愛の目はほの暗い何かを宿している、と恋桃は思う。

斗愛「ねぇ、さっきの彼とどういう関係?」
恋桃「奥田君ですか?恋桃の前の席に座っているクラスメイトです。あ、あと応援合戦メンバーの1人でもあります」
斗愛「よく話すの?」
恋桃「最近話しかけられるようになりました」
斗愛「そう・・・。桃ちゃんは俺が好きなんだよね?桃ちゃんは、俺が・・・」
恋桃「好きです。大好きですよ、先輩」

うなだれだした斗愛の顔を覗き込み告白すると、斗愛の腕が伸びてきて恋桃を閉じ込めました。

恋桃(えぇぇぇええええぇえええ!?!?!?
こ、これはーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!)

恋桃「なっ、なんで恋桃を、だ、抱きしめるんですか!?!?」
斗愛「嫌?」
恋桃「い、や、じゃないですけど、いきなりどうしたんですか!先輩!!」
斗愛「・・・先輩って呼ばないで」←抱きしめる力が強くなる
恋桃「はい!?」

恋桃(今更どうしたんですか!!?)

抱きしめられて心臓がもはやドキドキではなくドコドコ鳴り響いているがそれよりも斗愛の様子が気になる。

斗愛「無条件で名前を呼ばれるあいつがずるい」←絞り出すように