壁の中の彼氏

「文芸部? 確かに亜美は本が好きだよな。本棚にはもう入り切らないくらいだ」
 父親に言われて亜美は照れ隠しに笑う。
 そしてまた真剣な表情へと戻った。
「実はね私……将来は小説家になりたいと思ってるんだ」
 両親にこのことを告げるのはこれが始めてのことだった。
 緊張で心臓が早鐘を打っているし、顔がカッと熱くなる。
 作品を読まれて笑われてしまうんじゃないかという恐怖が、また沸き起こってくる。
「それは素敵ね」
 いつもの声のトーンで母親がいい、亜美はホッと息を吐き出した。
 見るとふたりとも普段どおりの様子だ。