壁の中の彼氏

 言い訳を口にしながらカバンの中からパンチ止めした原稿用紙を取り出す。
 手を差し出してきたのは優子だった。
「ねぇ、本当に読むの?」
 思わずそう質問して優子が驚いたように「え?」と、聞き返してきた。
「亜美ちゃんはまだ誰にも自分の作品を読ませたことがないんだって。だから、私達が読者第一号なんだよ」
すかさず友惠が助け舟を出すと、アミが「あぁ」と、納得したように頷いた。
「それなら先生に読んでもらう? その方が安心じゃない?」
 アミの提案に亜美は頷いた。
 大人の人が相手ならめちゃくちゃにけなされる心配もないだろうと思ったのだ。
 だけどやっぱり誰かに読まれるというのは緊張する。