壁の中の彼氏

「あのとき、もっと早くに僕に相談をしてくれていれば、なにか変わったかもしれないのに……」

☆☆☆

 僕が明人を大学構内で最後に見かけたのは、明人がバイトを始めて三ヶ月ほど経過したときのことだった。
 季節は十月で、夏の暑さも随分と和らいだ頃だった。
 そんなとき、構内ですれ違った明人の顔は青ざめていた。
 普段すれ違えば必ずどちらかが挨拶をしたけれど、この時の明人はずっとうつむいていて僕の存在に気がついていなかった。
 だから僕は足を止めて「明人?」と、名前を呼んだんだ。
 明人はビクリと体を跳ねさせて立ち止まった。
そして僕の顔を見て怯えた表情を浮かべた。