壁の中の彼氏

「それは君のせいじゃない。あまり深く考え込んじゃダメだ。担当がついたんだろう? 後少しでデビューじゃないか」
 そういえば何度も担当から連絡が来ていた気がする。
きっと次回作の打ち合わせがしたいんだろう。
 次回作?それも私の考えたものじゃない。私の作品じゃない!!
「こんなことになるならネタの提供なんてしてほしくなかった!」
 亜美はまた壁を両手でドンッと叩いた。
 ドンッドンッと駄々っ子みたいに何度も繰り返す。
 そのうちに涙が溢れ出して止まらなくなった。
 手がヒリヒリと痛むけれど、辞められない。
「おいやめてくれ。大切な手だろ」