壁の中の彼氏

 布団の中でジッとうずくまっていても、体が溶けてドロドロになることはない。
いっそそうなってしまえれば楽なのに、亜美は亜美としての形を保ち続けていた。
「大丈夫か?」
 そんな声が聞こえてきてそっと布団から顔を出す。
 今の声は男の声だ。
 亜美は右手を伸ばして冷たい壁に手を触れた。
「まだ……生きてる」
「当たり前だ。君は死なない」
「だけどアミは死んだ!」
 亜美は叫んで両手をバンッと壁に当てた。
 男が小さく息を飲む音が聞こえてくる。
「アミは自分のネタで、自分の文章で勝負してた。それで結局……死んだ」