壁の中の彼氏

 ずっと原稿と向き合っていたから時間の経過に自分が追いついていない感覚があった。
 街の様子がクリスマスからお正月に代わり、 更に春らしさを感じるようになって、始めて亜美は自分が進級したのだという実感を得た。
「すごくいい作品ができた。これならきっと大丈夫だ」
 最終的に出来上がった小説を男に読んで聞かせると、男は深くため息を吐き出して納得したような声を出した。
 亜美も、ここまで走りきったのだという充実感が胸を支配している。
「大丈夫ってなにが?」
「この作品もコンテストに出そう」
「え、そうなの?」
 男はもともとそのつもりで亜美に助言していたのだろう。
 声は自信に満ち溢れていた。