壁の中の彼氏

 亜美は頷き、残りの夕飯をかき込んだのだった。

☆☆☆

「そろそろ長編小説を書いてみる?」
 男にそう言われたのは数日後の夜のことだった。
 いつものようにパソコンへ向かって作品を執筆していた亜美は手を止めて壁に視線を向けた。
「長編小説?」
 ついこの前両親とそんな話をしたことを思い出す。
 プロデビューするためには必須条件と言える長編小説の執筆。
「短編は書きなれただろう? 最近は読ませてもらってもほとんど修正箇所がない。よく書けてる」
「だから次は長編?」
「そういうことだな。まだ書けそうにないか?」
「……わからない」
 亜美は素直に答えた。