壁の中の彼氏

「そうじゃないよ。だけど、自分の作品が選ばれるのは運もあると思う。もっと強敵はきっと沢山いるから」
「そんなのわかり切った世界でしょ」
 アミはそう言うとキュッと唇を引き結ぶ。
 ジッと街並みを睨みつけているように見えた目には涙が浮かんできていた。
 力を入れておかないと泣いてしまいそうになるから、目つきが悪くなっていたみたいだ。
「アミはすごいね。こんな世界でずっと生きてきたなんて」
「あんただって、同じなんじゃないの?」
 聞かれて亜美は左右に首を振った。
 私は孤独な戦いはしていない。
 男とふたりになってからは常に順調で、アミみたいにこうして一人で泣いた経験もない。