壁の中の彼氏


福田亜美は流れていく景色を後部座席の窓から眺めていた。
  すでに数時間前に発った元の街からは遠く離れて見慣れない景色が続いている。
  それでもなんとなく懐かしさを感じるのはここもついさっきまで暮らしていた街と同じ中型都市であるからだった。
  後方へ流れていく景色の中には亜美にも見慣れたチェーン店の看板がいくつもあった。
  亜美のお気に入りのお店の看板を見かけたときには、服には困らないなと感じたところだった。
「もうすぐ到着するぞ」
  かれこれ3時間近く運転している父親が疲れを感じさせない声で亜美へ向けて言った。
「うん」