反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 ――やっぱりこうなるよな。

 文化祭のあの日から、廊下で誰かがヒソヒソと話す声が耳に入るようになった。
「ねぇ、あのときのチャイムの音、聞いた?」
「夏樹が小春の手、引いてたよね」
「やっぱり、そういう仲なのかな」

 くだらない噂。
 でも、それが“くだらない”で済まないのは、俺が一番よく知ってる。

 ――もう二度と、あいつを泣かせない。
 中2のときにそう決めたはずだったのに。
 また、こんなことになっちまった。

 だから、避けるしかなかった。
 冷たくして、誤解させても。
 また同じことが起こるくらいなら、そのほうがマシだ。

 「おはよう」
 朝、小春が笑顔でそう言ったとき、思わず返してしまった。
 でも目を見たら、心がぐらついた。
 だから、視線を逸らした。

(……俺のせいでまた噂になるなんて、絶対嫌だ)

 教室でいつも通り過ごしているふりをしても、気づけば視線があいつを追ってる。
 笑ってる顔を見るたび、心がちくりと痛む。

 放課後、声をかけられた。
「ねぇ、一緒に帰ろう?」

 小春の声。
 でも、俺はすぐに答えた。
「……悪い、部活ある」

 このまま顔を見ていたら、全部壊れそうだった。

 背を向けた瞬間、胸がぎゅっと締めつけられる。
 踏み出す足が重くて、心がずっと叫んでる。

(俺だって、本当は……お前と帰りてぇよ)

 せっかく、近づけたと思ったのに。
 また、その笑顔から離れていく――