覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



 仕事に追われ、いそがしそうに行き交う大人たち。

 車の渋滞や走り去って行くトラックの騒音を、いつも耳にしている。


 電車はいつも満員で混雑、人込みにまぎれながら暮らす、都会の生活で私は……

 小笠原諸島の父島で生まれたことさえも、心の奥底にしまい込んでいたのかもしれない。

 でも、この神社を目にしていると、幼いころの記憶が私の心にあふれ出てくる。


 楽しかった公園の遊歩道めぐり、島の固有種の祝物はとても綺麗だった。

 展望台からは船着き場の港が一望できて、水平線から島に向かってくるフェリーをみんなで見つめたりしたよね……


「美央、変な顔してないで船着き場の港に行こうぜ」


「へっ、変な顔ですって! ひどいよ賢斗くん!」


 昔のことを思い出して目を細めていただけなのに、なんてこというのよ!

 もんくを言ってやろうと思ってたら、賢斗くんは真央と一緒に歩いて次の場所へ行こうとしていた。


 二人ならんで歩く姿を背後から見つめていると、二人とも身振り手振りで伝えたいことを表現してて、いつも持ち歩いてるタブレットを使わなくても真央の意思は賢斗くんに伝わってるような感じがする。


「そういえば、島の子たちといる時はタブレットをもってない……」


 意思の疎通ができるから、必要ないんだって私にもわかるよ。


 なんだか気苦労ばかりしていた私だけど、言葉が話せなくて不自由な生活はしてないみたい。