覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



 近所の子供たちはみんな、声が出せない妹の事情は十分にわかっていた。

 自分たちだけ楽しそうにしていたことに罪悪感を抱いてる。


 暗い顔をして下を向く子供たち、自分たちにはどうにもできない現状に悔しさでいっぱいだろう。

 みんな、どうにかして以前のような活発的でおしゃべりな真央に、戻ってほしいと願うってるにちがいない。


 話し声もなく、波の音だけが耳に聞こえてくる。

 そんな中で、私は両手を大きく前に伸ばして妹を招きよせるように、大声でさけんだ。



「真央っ!」



 私だけじゃなく、みんなも手を前に伸ばしはじめる。

 思いは同じ、海で溺れたトラウマを克服して真央に声を取り戻してほしい。

 その心が一つになったのか……



 真央はゆっくりと海水に右足をつけた。

 そして左足……



 ゆっくりとだけど、みんなの所に歩き進んでくる。

 昨日の夜は私と手を繋いでだったけど、今日はちがう。


 少しずつ、一人で力強く海水をかき分け歩いてくる。

 おどろくと同時に、静かに息をのんで、その様子をみんなで見つめた。


 波打ち際から十メートルぐらい、短い距離だけど真央にとっては大きな一歩。

 子供たち、みんなの目前で立ち止まった真央。



 うつむいた顔を上げると、目じりに溜まっていた涙が頬をつたって流れ落ちてる。