覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



 お父さんが気をつかって、先に声をかけてきた。

 笑顔で私を見つめながら、心配してくれてる。


「お父さん……」


「背は高くなったけど、昔と変わらないな。どうだ、東京での生活は、楽しんでやってるのか? 学校生活や勉強はうまくいってるんだろ?」


「うん、それなりにね……」


 私の心配ばかりで、今回の騒動にはふれてこない。

 怒られてしまうかもと思ったけど、何も言われなかった。

 ただ笑顔で私を見つめながら、お父さんは話かけてくる。


 最後に会ったのは七年前、父島のフェリー乗り場で分かれたきり。

 私はお母さんと東京に行き、妹の真央はお父さんと父島へ残ることに。


 乗船用のタラップを昇りながら、何度も振り返って二人の姿を見つめていた。


 私が手を振っても、真央は手を振りかえしてこない。

 お父さんの手を握ったまま、口を閉じて私を見つめてくる。

 その目には、今にも流れ落ちそうな涙が目じりにたまっていた。


 船が港を離れていっても、お父さんと真央はその場に立って船に乗る私を見つめるだけ。


 二人の、さびしそうな顔を思い出して私は……



 思わず涙を流してしまう。