展望デッキの柵を両手で力強くつかみながら、私は思わず声を上げてしまった。
港を横目に、大きな橋の下を通過していく。
船はゆっくりと東京湾へ入るみたい。
空港や町の景色が、私の視界に広がっていく。
「うわぁ~、キレイだな~」
東京に住んでいながら、驚くことばかり。
港や海をひさしぶりに見た私は、すなおに感動してしまう。
人ごみや車の渋滞、電車の混雑に嫌気がさしていた。
でも、さわがしい都会を一歩はなれたら、こんなにステキな世界がひろがっている。
言葉にできない心地よい感覚は、まるで夢のよう。
私の長い黒髪の毛先をゆらす塩風、磯の香りがなつかしく感じる。
たぶん、昔のことを思い出しているからだろう。
私と妹が幼少期に過ごしていた、父島での暮らしが脳裏に浮かんでる……



