覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



 問いかけても、女の子から返事はかえってこない。

 走る速度は遅くなっても、自転車は走りつづけてる。


「だれも追い掛けてこないみたい」


「……」


 だんだん、ゆるやかな坂道に変わっていく。

 何も文句を言わずに、女の子はただひたすら私を後ろに乗せて走ってくれてる。


「疲れてない? だいじょうぶかな」


「……」


 無言のまま、自転車のペダルを一心不乱にこぎつづける女の子。

 走り進んでいると、島の西側を見渡せる展望台についた。


「この景色、見覚えあるような」


「……」


 話かけるけど、何も言い返してこない。

 危険な思いをして逃げてきたんだから、きらわれてる訳ではなさそう。


 駐車場を通って落下を防止するための柵まで走り寄り、自転車を止める。

 私は荷台から下りて、女の子に頭を下げてお礼を言った。


「ありがとうございます」


「……」



 あいかわらず、女の子は無言のまま。