「真央……」
汽笛を鳴らしながら、ゆっくりと港を離れていくフェリー。
私は頬を伝う涙を手で拭き取りながら、みんなを見つめてる。
家族や見送りの島民たちの姿が小さく見えてきたころに、何かがすごい速度で近づいてきた。
それは、たくさんのボートで、私が乗るフェリーを追いかけてくる。
よく見ると、漁船や観光ツアー用の船だった。
フェリーと同じ速度で横に並びながら、進むボートの上で誰かが手を振ってる。
「あっ、賢斗くん! イガちゃんまで!」
その他にも、ボートや船の上で大きく手を振っている姿を見て思わず声を出してしまった。
「みんな……」
漁師の子たちが、お父さんの操縦する船に乗って別れの挨拶にきてくれた。
感激で涙が流れてるけど、悲しさや寂しさじゃない。
驚きと嬉しさで、私は笑顔になってしまう。
「またくるからねぇ~!本当に、ありがとうっ!」
大声でさけびながら、私はみんなに向かって手を振る。
追いかけてくるボートや漁船に向け、別れの言葉の変わりにフェリーが汽笛を鳴らし始めた。
「賢斗くん! イガちゃん! ありがとうね~っ!」
私の声が届いたのか、二人とも両手で大きく手を振ってくれた。
やがて、見送りのボートや漁船もフェリーから離れていく。
私は展望デッキに立ったまま、小さくなっていく父島を見つめていた。
私は潮風に吹かれて、長い黒髪の毛先がゆれている。
ちょっと肌寒いけど、この場をはなれられない。
私が見つめていた父島は、やがて視界から消え、水平線と一体になっていく。
名残惜しい私は、展望デッキから小笠原諸島のある方角を見つめたまま立ち尽くしてる。
たくさんの思い出を胸に、放心状態の私。
その場を、しばらく動くことができず水平線を見つめていた……



