覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



「今日はありがとう! みんなで飲んだレモネードジュース、おいしかったよ! また遊びにくるね!」


 近所の子たちにも笑顔で挨拶を終わらせ、私は再び家族と向き合う。



「じゃあね、さよなら……」



 背中を見せて、私はキャリーバックを引きながらタラップを昇り、フェリーの船内に向かっていく。

 途中で、なんども振り返って家族に手を振る。

 さびしくて涙を流しそうになったけど、我慢して笑顔でお別れすることができた。


 船内に入った私は、すぐにフエリーの横にある展望デッキへ向かって島民や友人、家族を見下ろす。

 まわりは観光客ばかりで、みんな父島で楽しく遊んで東京へ帰る人ばかり。

 船着き場は大勢の島民があつまって、乗船してる人たちに手を振り、お別れの挨拶をしている。



 私は落下防止の手すり柵に体を付けて、家族を見下ろす。

 岸壁に立つ真央と視線を合わせたまま、私は体を動かすことができない。


「真央……また、かならず戻ってくるからね……」


 ひとり言のようにつぶやいて、小さく笑顔で手を振る。

 鳴り響くフェリーの汽笛を耳にしながら、私は無意識に涙を流していた。


 私の表情を見ていた真央は、タブレットで顔を隠したまま、しゃがみ込んでしまう。

 寂しさと悲しみの感情を押さえきれず、真央が泣き崩れている。


 お父さんと律子さんも、切ないない表情で私を見つめていた。



 こんなにも心がぎゅっと、締め付けられる思いをしたのは始めてだよ……