覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



 でもね、私がいないあいだ妹をささえてくれてありがとう。

 声が出ない真央があんなにも明るい性格で生活しているのは、賢斗くんと近所の子たちのおかげなんだ。


「感謝の気持ちで、いっぱいだよ……」


 小声でつぶやいたので、賢斗くんには聞こえなかったはず。

 この声は誰にも届かなくていい、私の心の叫びなのだから……


「賢斗くん」


 私は、賢斗くんに向かって右手の小指を差し出した。


「何だ?」


 私と向かいあって立つ賢斗くんは、首を横に傾げて不思議そうな顔をしてる。


「指きり……してよ……」


 頬を赤くして照れる私の小指に、賢斗くんは黙って自分の小指をからめてきた。


「これでいいのか?」


「うん……」


 私は、指切りをしたまま、展望台で賢斗くんに向かって宣言をする。

 水平線に沈む夕日を背にして、潮風を全身に浴びながら口を開く。


「約束するよ!来年の夏、私は小笠原諸島に必ず帰ってくる」


 私の声を聞きながら、賢斗くんは黙って頷いてる。


「その時に、もう一度この場所で、賢斗くんの口から私への気持ちを聞かせてほしいな……」


 笑顔を見せながら、賢斗くんは静かに言う。


「わかった、そうさせてもらう」


「賢斗くんの気持ちが変わってなければ……私も、その時は……」


 それ以上、言葉が出てこなかった。

 でも、私の気持ちは十分わかってくれたはず。

 長い時間、小指をからませたまま、私と賢斗くんは見つめあっていた。


 
 来年、父島の展望台で必ず再会することを約束して、私たちは小指を放す。



 きっと、かならずもどってくるからね。

 賢斗くん……