覚悟を決めた夏、あの空の向こうに



「おぼえてるか、美央がこの島を出ていく直前のこと」


 賢斗くんの言葉を聞いても、思い出せない。

 私は東京で暮らしていくうちに、みんなのことを忘れてしまったのよ。

 中学一年生になって男らしい賢斗くんを見ても、誰かわからなかったし……


「ごめんなさい……」


 私は夕日を見つめたまま、冷たく答えてしまう。



「美央が俺と結婚したいから、この島に残るって暴れてたの忘れたか?」


「……はあっ!?」



 顔から火が吹き出そうなほど恥ずかしい、幼かったころとはいえ、そんなに大胆なこと言ったかな?

 ぜんぜん記憶にないんですけど……


 そういえばこの前、私が賢斗くんを店の前で見て「誰?」と問いかけたことがあった。

 真央がタブレットの画面に「フィアンセ」とか書いてたけど、このことだったのか、なるほどね……


「そんなことがあったのかもしれないけど、小学生になる前のことでしょう?」


 声がひっくりかえってしまったので、私が動揺してると思われたにちがいない。

 それでも恥ずかしさのあまり、覚えてない振りをしてごまかそうとしてる。

 その時とつぜん、賢斗くんの口から……



「あのころの話しって、今でも有効なのか……」



「えっ……」