マイクとマウンド、夢の向こうへ

旧図書室の奥。

 長机を囲むように、加害者と関係者たちが座っていた。

 空気は重く、誰も目を合わせようとしない。

 今回も、巽先生と保健の先生がオブザーバーとして立ち会っていた。
 

 部屋の中央に立つのは、臨床心理士・秋山道明。


 深明の父だった。

 彼は、ホワイトボードに一言だけ書いた。

 「支える人は、誰に支えられるのか」

 誰も、すぐには答えられなかった。

その沈黙が、何よりも重かった。

 道明は、静かに語り始める。

 「秋山深明は、誰かのために動くことを選び続けてきました。
 
記録を取り、分析をし、部活と生徒会を両立しながら、誰かの“支え”になろうとしていた。

 でも、彼女が傷ついたとき——誰が、彼女を支えたでしょうか?」

 主犯格の生徒が、視線を落としたまま、指先を握りしめる。

 「あなたたちの言葉は、冗談ではありませんでした。
 
“便利屋”“吐きそう”“いない方が空気がマシ”——
 
それは、誰かの存在を否定する言葉です」

 道明は、ホワイトボードの文字を指差す。

 「支える人は、誰に支えられるのか。

 この問いに、あなたたちが答えられるようになるまで、
 私たちは、何度でもこの部屋で話し合います」

 その言葉に、誰かが小さく息を呑んだ。
誰かが、初めて涙をこぼした。

 それは、罰ではなかった。
それは、責任の重さに気づいた瞬間だった。