マイクとマウンド、夢の向こうへ

同じ頃。

 夏祭りの夜空に、花火が次々と咲く。

 麗菜は、レジャーシートに寄り添って座る直斗の顔をちらりと見た。

 「もう、会えなさすぎて……不安すぎて。

 直斗の気持ちが離れちゃったかなって思っちゃった」

直斗は浴衣の袖を直しながら、少しだけ笑う。

 「そんなことないよ。

 麗菜のことは、いつだって考えてる。

 この間の台風の日も、サブスクで映画を観たよね。

 映画の感想を言い合いしたの、楽しかった」

麗菜は視線を落とし、小さく息をつく。

 「直斗、いろいろ忙しいじゃない?

 最近……インターンとか、ゼミとか。

 試験も終わったばかりなんでしょ?

 わたし、わがまま言えなくて」

「確かに忙しい。

 でも、だからって、麗菜への気持ちはなくならない。

 ちゃんと、ここにいるよ。

 何なら、花火が終わった後、家に泊まりに来てほしい。

  ……ダメ、かな。

 今夜は、麗菜の時間を俺に全部、ちょうだい」

麗菜の目が、花火の光に揺れる。

——ずっと待ってた。この言葉を。
——やっと言ってくれたね。

 「……いくらでも、あげる。

 ……嬉しい。
 こうやって、直斗と一緒にいられるの」

 ぎゅっと、直斗に抱きつく麗菜。

夜空に咲く大輪の花火が、ふたりの離れていた時間を埋めてくれたのだった。