マイクとマウンド、夢の向こうへ

放課後の放送室。

原稿を手に発声練習をしている麗菜。

直斗が後ろからそっと近づいてきた。

「肩に余計な力が入ってる。
もう少し脱力」

両手で肩に触れられた瞬間、麗菜の背筋がぴんと伸びた。

 その手の温度が、制服越しにじんわりと染み込んでくる。

「背筋はまっすぐ。

腰から声を出す感じを意識してみようか」

低く落ち着いた声が、耳のすぐそばで響く。

言葉よりも、その距離感に。

意識が持っていかれてしまう。


「近いです、松倉先輩」

「これ、わざとだって言ったら、麗菜はむくれるじゃないか。

これ、部活の練習の一環だからね。

あわよくば、とは思うことも、なくはないけど。


……今はまだ、麗菜の気持ちを大切にしたい」

椎菜がその日、ベッドで眠るまで、肩の熱は消えなかった。