『突然電話ごめん。今仕事終わりだよね?少し話せる?』
いつもと様子が違う友人に気づかない私は、食い気味に質問を投げかける。
「この時間に起きてるの珍しいね!何かいいことあった?」
『最近先輩とどうよ』
普段の彼であれば『それがさ〜』と意気揚々と話し始めるのだが、かしこまった口調だった。
「前にも話した通り、まだ返信ないんだよね」
『既読は?』
「既読もつかない。早く3人でごはん行く話進めたいんだけどね!」
『あぁ…』
自ら質問しているのに上の空の返答だった。
そんな彼に疑問を抱きつつも先輩の話を続けようとする私を抑え、重そうに口を開いた。
『…身元不明の会社員が事故った記事、見た?』
「見たよ。最近事故多いよね」
その記事とは、通勤途中に起きた単独事故のことだった。
猛スピードで走行していたためか、車は大炎上。
消火され搬送されるも、
運転手は、死亡したらしい。
ーそういえば、その事故車両は先輩の車と同じ色だった。
原形を留めていない車両から車種を特定することは難しかったが、先輩の車と少し似ているようにも見えた。
事故が起きた時間も、道も、全部先輩に当てはまってしまう。
ーまさか、まさかね。
そう思っているはずなのに心臓がやけにうるさい。
『まだ確定じゃないしあくまでも俺の推理なんだけど』
心臓がドクンと跳ねる。
『本当に不謹慎なことを言うけど』
私に気を遣ってか、一瞬、言うのを躊躇ったかのように感じた。
『交通事故、先輩じゃない?』
何と言われるか分かっていたはずなのに、改めてその言葉を聞いて頭が真っ白になってしまった。
