セーヌ川では泳げない

軽やかなステップを踏み、風に乗り季節に乗り、舞うようにきみが動く。桜の花びらがきみのしなやかな軌道を追いかけ、きみとともに踊る。

「酔った」
「バカだな」
不意に彼がへたりと座り込んだ。私はあきれる。そりゃ、お酒飲んで踊ったら酔いがまわるよ。
(あれ?
でも、彼は今日あんまり飲んでな、)
いきなり、

右手を取られ、手の甲にちゅうっとキスをされた。
(跡がべったりつくくらい濃厚な)

「孤独じゃないってサイコーじゃん?
きみも、俺もさ」


2025.09.10
蒼井深可 Mika Aoi