「くおらー!!」
私はその本を右手に大教室を飛びだす。どこからか聞き慣れた高笑いが聞こえる。上か。踊り場か。
「なんてことしてくれちゃってんの!!」
「アハハハハー!!」
無駄に達筆なのがさらにむかつく。「犯人は俺だ」と言う証拠を残している。私がダンダンと音を立てて階段を上って行くと、彼はさらさらの髪をふわっと揺らして、
飛び降りた。

踊り場から踊り場へ。
(飛んだ……っ……!!)

けど、
やっぱり着地は足の裏やかかとが痛かったらしい。ジンジンしているのか、着地した姿勢のまましばらく固まっている。うわ、かっこわる。階段を上ったり下りたりしている学生や先生たちがおどろいて立ち止まる。ストップモーション。

「いつもんとこでねー!!」

彼は丸くカットしアッシュに染めたストレートの髪をふわりとさせ、階段を駆け降りていく。髪の内部は優しいグリーンに染まり、階段の上の小窓から入る光でキラキラしている。
180センチメートルの長身を感じさせない機敏な動き。白い細身の上着のえり元に濃いピンクのラインが入っている。前ジッパー。濃いブラウンのハーフパンツ。左右の色がちがう靴下。赤と黒。とラベンダー色のスニーカー。靴ひもの代わりにオーガンジーのリボン。紫からピンクのグラデーションが綺麗だ。ひらひらちょうちょのように舞う。
- いつものとこで。

ふわっと心臓が浮き上がる。

「結局、
アイツ犯人じゃなかったじゃない」