私の行きたい所ってどこだろう。

そういうの、あんまり考えた事もなかった。


「…水族館」


そう思った瞬間、無意識にポツリと呟いていた。


「え、水族館?」

「うん」


頷くあたしにクスクスと笑う翔が気になり、逸らしてた視線を翔へと戻す。


「えっ、何?」

「水族館って。まった、みぃちゃん可愛いな」


それだけ言って、またクスクス笑っている翔が、何で笑ってんのか私には分からなかった。


可愛いいって何が?

水族館がガキって事?


確かに子供チックかも知んない。

もっともっと、高級店とかお洒落な店とか言ったほうが良かったのかも知んない。

でも、そんな場所、私はよく知らない。


だけど私の頭に浮かんできたのが水族館だった。

そこに私は行きたかった。


いつか忘れたけど夢に出てきたパパとママと私…

水族館の約束をしてたのに結局1度も行く事なんて出来なかった。

だから私は敢えて行きたい場所を水族館にした。


小さきときの記憶が未だに残ってるなんて。

だからと言って父親を思い出したいわけじゃない。

ずっと憎んで、憎んできた存在。


そうやって今まで生きて来た。

でもあの水族館の開放的な空間を見つめてみたかった。