任務当日。いつもよりちょっとぎこちないけどいつも通りに接そうとしている。
みんなの手元には私がコードを組み替えて性能を上げたゆきちゃん作の通信機がある。


「いい?わたしはここで指示をする。かづきはめいどになりきって護衛。ゆきはもし攻撃された時用の煙幕はっといて。れいとはれんは身を潜めて護衛する。」


みんなそれぞれのプロフェッショナルで、かづきなんか初めて見た時ほんとにかづきか疑っちゃったもん。
澪も鬼ごっこ絶対勝てないし葉蓮も足の速さなら学園の誰にも負けない。ゆきちゃんはなんでも作れちゃうし、凪美はカリスマ性があって頼れるリーダーだ。


こんなみんなが、大好きだ。
だけどこれが終わればもうここには居ないから。


「さあは。。。監視カメラに侵入して館内を見ていてくれる?」
「わかった!」


そして、なみはふうっと息を吐き、緊張気味に口を開いた。


「あのね。。。わたしが言い始めたことだけど、このときだけは忘れて、全力を出して。わたしも。。。さあを信頼する。」


笑顔の仮面がはりついているけど、内心はぐちゃぐちゃ。
私のせいでなみが苦しんでる。チームを乱してる。
でも、それ言わなくて良くない?なんでいうの
こんな優しい人たちばっかりなのに、裏切らないといけない。
お姉ちゃんが1番だから。この人たちなんかどうでもよくない?

天秤が揺れる。
このままやめればいいじゃん。みんなと一緒に居られるよ?
お姉ちゃんが悲しんでるんだよ?やらないはないよ


「よおっし、いこっ!任務開始だっ」


大丈夫、大丈夫。私は自分に言い聞かせた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

/こちらかづき!護衛対象に接触完了。待機します!
/わかった。れいとはれんは?
/こちられい。廊下上待機中
/こちらはれん。玄関前待機中
/あ、えっとこちらゆき。煙幕5個作れた!
/了解。さあは?
/監視カメラ内に不審人物無し。


サクサクと進む会話が終わり、ゆきちゃんと話した。
少し緊張してるのか、顔が硬い。


「あの、ゆきの煙幕間に合わなかったらさあちゃんなんか出来ないかな?もちろんゆきもがんばるけど」


通信機越しでも伝わるふわふわした声に落ち着く。


「かづき、通信機持ってるよね?それをハッキングして爆音流すわ」
「あははっ、了解。ありがと!」


ゆきちゃん可愛い。
気づいたら心の中はゆきちゃんやれい、かづきたちで埋まっていた。

お姉ちゃんじゃないの?

私の心が言う。

お姉ちゃんのために復讐するんじゃないの?

お姉ちゃんもそうだよ。でも、みんなも。。。

お姉ちゃんじゃないの?大事なのはひとりだけじゃないの?好きは軽くなっちゃったの?


うるさい!!


心の中で繰り返される言い合いが辛い。痛い。
今は任務中。ちゃんとやろ!
むりやり力を切り替える。力任せに監視カメラに目を向ける。


1階の、護衛対象の部屋の下に、不審人物がいた。