5月某日───。

「超重要人物の護衛だってさ!え〜めっちゃ楽しみ!」

みんな初めての任務でにやけが止まらなさそう。
1日だけ護衛か監視できないらしいって。なんか大丈夫そ?

「えっと、人物は、浅葱、創介?」
「ええええっ!?株式会社アサギの子息!?やっば!」

アサギソウスケ。一気に私の記憶がよみがえってくる。目の前がぼやける。涙のせいだということをあとから理解した。どうにか押し込めようとふうふう息を吐く。手もぎゅうっと握りしめ何かを逃がすように全身に力が入っていく。

そんな私に気づいた歌月たちが焦りながら近づいてくる。

「え!?大丈夫?小愛ちゃん!?」
「大丈夫。。。?大丈夫、大丈夫。大丈夫だよ。。。!」

悠希ちゃんの声がお姉ちゃんの声と重なる。
出てきそうな涙を逃がしグッと前を向く。にこりと笑う。


「うん。ごめん、大丈夫!続きやろ」

いつも無表情めな葉蓮がなんだか気遣いげ?


「無理しすぎんなよ。おれらに言えないこともあるだろうけど、適度に相談しろよ。」


図星すぎた。思わずパソコン打つ手をとめたくらい。
やば、不自然すぎた?


「うん、わかった、相談する!」


凪美以外の顔がほっとしたような顔になる。


「ねぇ、嘘はつかないでよ?」

冷たい声。凪美?

「別に相談するかしないかはあなたの自由だけどね、信頼できるようにしなよ」


きっと凪美なりの心配だと思う。
だけど、今はどうしても素直に受け取ることが出来ない。


「うん、わかってる!ごめんね?心配させて」


これ以上触れられないよう話を切る。


「あっ、トイレ行ってくるね?」
「ねえっ、ちょっ!」


焦ったような声で凪美は言うけど無視して外へ出る。
蒸し暑くてべとべとする。
今の気持ちみたい。


心配してくれてる子に良くないこと言っちゃった。
嫌だなあ。自分のこと。

こんなに中身真っ黒でみんなを目的のための駒にしてるのに、みんなは私と笑ってくれる。

悠希ちゃんなんか、いっつも私がくっついてもにこにこ笑ってる。でもいいの?こんな私が、

だけど悠希ちゃんと居るとあったかい気持ちになるの。
こういうときだけ、普通の女の子に戻ったみたいで。
あの日に戻ったみたいで。