一昨日返ってきた模試を未だに開けられずにいた。
これが、もし合格圏に届いていなかったら、私は英知高校を諦めなくてはならない。
それが怖かった。
今まで、一生懸命にやってきたつもりではある。
ちゃんと、模試の結果も伸びていたし努力の成果も目に見えてきていた。
だけど、もしも合格圏に届いていなかったら、なんて思うと開ける決断ができなくて怖い。
ゆうやとのチャットを開いて、深呼吸を置いた。
今だけは、面倒臭い奴になってもいいから助け舟にさせて。
オンラインであることを祈って、送信ボタンを押す。
ユ「12月の最後の模試が返ってきた もし合格圏じゃなかったら、面倒臭いだろうけど、慰めて」
強がるのは得意だった。
中学受験で落ちた時だって、悔しかったけど泣かなかった。
それ以降も、誰の前でも泣かなかった。
泣いたら、気まずくなるのは分かるから。
イタイ奴になるだけで、本当の味方なんていやしない。
でも、ゆうやなら、そうはならないと思った。
励まし上手ではないけれど、一生懸命を馬鹿にはしない。
ゆ「うん。わかった」
その言葉が心強く、響く。
封筒を開けて、模試の結果を開いた。
鼓動が高鳴って、手が震えた。
偏差値、73。
高校の基準には1下回っているけれど、合格圏だ。
嬉しさと安心感が込み上げる。
ユ「ゆうや。合格圏、行ったよ」
喜びが溢れた。
英知高校を受けられる権利。
これなら、きっと母も認めてくれる。
ゆ「おめでとう」
短いけれど、温かいその一言に、心が華やいだ。
階段を降りて、リビングへと向かった。
けれど、まだ見せるわけじゃない。
条件が揃っただけで、まだ準備は必要だ。
「莉桜。今日さ、お母さんと話してる時、お母さんの機嫌、ちょっと台無しにしてもいい?」
グッと拳を握って笑う。
「もちろん。私も応援するよ」
妹の笑う顔に、きっと大丈夫だろうと思えた。
「ありがとう」



