桜が咲く時まで、生きていたい

お風呂から上がって病室に戻ると宗一郎が中で待っていた。

「あれ、先生とのお話は?」

「終わったよ。それより、お風呂入って体調とか悪くなってないか。少しでも何かあれば言うんだぞ」

「わかってるよ」

そう答えながらふふっと笑う。姫奈と再開してから、これが口癖のように聞いてくるのだ。

「姫はこれから何するんだ?」

「そうだね〜、内緒かな」

「えぇー、教えてくれよ」

その言葉にふふっと返して誤魔化した。

「それより、もう帰るでしょ。お見送りするよ」

「いいよ。風呂入ったばっかだろ?外に出たら汚れるぞ?」

「いいの。私がしたいんだから」

手早く荷物をまとめ終わった宗一郎に続いて病室を出る。

「今日は楽しかったよ。一緒に着いてきてくれてありがとう」

「なんだ、姫の方からそんなこと言うなんて、珍しいな。ていうか、着いていくとか当たり前だろ。俺は姫が行くところにならどこにでも着いていく。」

困るなぁ、そんなこと言われると、胸が締め付けられるように痛くなる。

「着いてこなくていいよ。高校卒業前最後の夏休みでしょ。春樹くんたちとも遊びなよ」

「あいつらはいいんだよ」

穏やかな会話の時間。幸せな時間はすぐに過ぎ去ってしまう。

「じゃあ、今日はここでお別れだね」

「あぁ、また明日」

「うん」

そう言って手を振る。

またね、とは言わなかった。…言えなかった。

自分でも最近自覚がある。

だって、自分の体だから。

見送りながら、待って、もっとそばにいてほしい。行かないで、と言えたらどんなにいいことだろうか。

宗一郎の姿が完全に見えなくなってから、姫奈も戻る。

だが行き先は自分の病室ではなく、小牧先生のところだ。